巫女病(みこやみ)という病があるそうです。思春期の女性に多く現れる精神性の疾患で、沖縄に多いと聞いています。統合失調症の一種で、神の声を聞いたり、自分とは違う人格があらわれたり、俗に言う神がかり的な現象に悩ませられ、沖縄では、これを克服すると立派なノロになるのだといいます。
「精神病」と「沖縄」がなぜ……最初そう思いましたが、調べていくうち、県外に比べ沖縄に精神病患者が多いのは、「宗教」と「精神病」というものが密接な結びつきにあり、そのことと関係しているらしいということがおぼろげながら見えてきました。つまり沖縄という宗教的な土壌は、霊的に過敏な女性たち、巫女的な人たちを多く生み出してきたということです。
そんな霊的に敏感な人たちが多く存在するということと、いわゆる精神病といわれる人たちが多く存在するということが比例しているのが沖縄という精神風土のように思われます。
ただ「沖縄海洋博」が開催されるまでの沖縄では、精神的に不安定な女性たちを特別視したり、隔離したりするということがなく、集団の中でごく普通に生活し、普通に治癒していく人も多かったということのようです。
ところが沖縄海洋博が開かれるということになり、皇太子が沖縄を訪問されるということが決まったときに事情が変わってきました。今まで小集団の中で生活していた、そういう精神的に不安定な人たちが、「このままではまずい」と、精神科のある病院に収容されることになったらしいのです。今ある病院だけでは足りないので、新設の精神病院が数多く誕生したとも言われています。
なぜ、こんなことを書くかというと、古代でも同じことが起こっていたと思うからです。今以上に、古代は神とか霊とかに敏感な時代でした。女性は多かれ少なかれ、家庭とか地域という小集団の中で巫女的な役割を果たしていたようです。
そのなかでも特に霊的に敏感な人たちがいました。この人達は、思春期に「巫女病」と言われる症状を発症し、これを乗り越えて巫女となり、「部族」という共同体に受け入れられ祭り上げられました。乗り越えられなかった人たちは狂人となって、それでも部族の中で共同体の一員として養われていたと思われます。