昼は、神に仕える身として、巫女達の力を利用し、我は神なりとその力を民衆のもとに示していきました。
その姿をみだりに公衆には見せないけれど、いかにも国を治める長として、そういう雰囲気を作り、そういう雰囲気を醸(かも)し出す舞台背景の中、「卑弥呼は素晴らしい者だ」と皆の心に植え付けていきました。
そして、一方、夜の顔がありました。巫女を手玉に取ったように、男どもを手玉に取った卑弥呼の姿でした。
卑弥呼は権力者と繋がっていきました。その権力者の力を利用していきました。
神がこのように私から伝わっています。私は神の化身ですと卑弥呼は男どもを手玉に取っていったんです。
この心はとても凄まじいものでした。色香に狂う男どもを冷ややかな目で見つめる卑弥呼がありました。卑弥呼の心の中は、人を愛することができないほど冷たい、冷たいものでした。
男は私の奴隷。我にかしずけ。ただ権利と財力をこの手に集めるための手段であると冷ややかに計画をしながら、その者の持てるものをみんな吸収するまで、自分に心を向けさせました。神という言葉を使って。
卑弥呼は、時には己を使い、そして時には巫女達を使い、男の心を腑抜(ふぬけ)けにさせていきました。すべては色と欲で繋がる真っ黒な世界を、卑弥呼は楽しんでいたかのようにも思います。
心の中を見ることを知らなかった卑弥呼の哀れさです。
冷たい、冷たい心に成り下がったから、何も信じることはできなかった。たとえ、心から卑弥呼に忠誠を誓う人物が目の前に現れたとしても、卑弥呼の心は動かされなかったでしょう。
卑弥呼は神だけを求めてきました。神を求める心はとても強かったです。神は唯一私を裏切らない。神は私なのだから。私は神と一つなのだから。神とともにある私は何も必要としない。
そんな卑弥呼の心を、私は今、感じて、それでもなお、卑弥呼に伝えることができます。
間違っていると。そのあなたの心は間違っている。しかし、あなたの中の苦しみ、暗闇は、あなたの中で喜びと温もりへ帰していけることを伝えています。